クリーンウェア・種類や選び方、管理の方法などについて解説
クリーンウェアは、精密機器や医薬品などを製造するなどの目的でゴミやホコリなどを排除したクリーンルームにおいて着用するための衣類の総称です。この記事ではクリーンウェア全般について解説しています。
さまざまな場面で使用されるクリーンウェア
クリーンウェアは、精密機器や医薬品、食品など、さまざまなものの製造現場に欠かせないウェアです。これらはクリーンルームと呼ばれるゴミやホコリなどを徹底的に排除した空間で製造されます。しかし、最もゴミやホコリを発生させてしまうのが人間。そのため、人間がゴミやホコリを発生させないようにクリーンウェアが必要になります。クリーンルームでは、空気が清浄された状態を保たなければなりません。クリーンウェアにはさまざまなタイプのものがあり、着用するスペースに合わせて使い分けます。
クリーンウェアを選ぶ方法
クリーンウェアは、クリーンルームの清浄レベルに合わせて選ばなければなりません。クリーンルームの規格は世界で統一されているわけではなく、アメリカでは6段階、日本では8段階で規格を表しています。クリーンルームの清浄レベルの規格は、アメリカの規格(米国連邦規格)では1立方フィートの空間にある0.5μm以上の粒子の数で段階が分かれており、たとえばその空間に100個の粒子が存在している場合は「クラス100」と表します。
日本では、1立方フィートの空間にある0.1μm以上の粒子の数で段階が分かれており、アメリカの規格でいうクラス100に相当するのは「クラス5」です。ちなみにISO(国際統一規格)は日本の規格と同様の8段階でレベルを表しますが、日本のクラス5は「ISO 5」という表記になります。そのほかに半導体工業で使われている規格もあります。
特定の産業において必要とされる清浄レベル
それでは、産業別に必要とされるクリーンルームの清浄レベルをチェックしてみましょう。ここでは、日本のJIS規格で清浄レベルを表しています。
- ・工業塗装
- 車体塗装や粉体塗装、静電塗装、メッキなどの工業塗装では、JIS規格のクラス10,000、クラス100,000の清浄レベルが求められます。
- ・電子部品など
- ハードディスクや基板の製造、ロケットのパーツ、時計の組み立てなどを含む電子部品の製造現場では、JIS規格のクラス100からクラス100,000の清浄レベルが求められます。特にハードディスクの製造はクラス100、クラス1,000といった環境となるため、クリーンウェアもそれに合わせて選びましょう。
- ・半導体や液晶など
- 液晶の製造現場には、クラス100からクラス1,000といった洗浄レベルが求められます。半導体の前工程においては、クラス1やクラス10といった、ひじょうに高い洗浄レベルの環境が求められるため、クリーンウェアもそれに対応したものが必要です。
クリーンウェアは、JIS規格ではなく米国連邦規格で表されている場合もあります。いずれにしても、現場に求められる清浄レベルに合わせてクリーンウェアを選べば問題ありません。現場に求められる清浄レベルと、規格の確認がとても重要です。
クリーンウェアの種類
クリーンウェアには、大まかに「つなぎ」と「セパレート」という2種類があります。一般的に、クラス1,000以上の清浄レベルが求められる現場においては「つなぎ」タイプのクリーンウェアが使用され、それよりも低い清浄レベルの場合は「セパレート」タイプが使用されます。ただ、求められる清浄レベルが低い場合でも、クリーンウェアを適切に取り扱わないと、適切な清浄レベルに保てないことがあるので注意が必要です。
つなぎタイプ
「つなぎ」タイプのクリーンウェアを着用する場合は通常、膝下程度までカバーするブーツを履きます。ただし、ダウンフローのクリーンルームでは、そのエアの流れを利用して発塵するために裾が解放構造になっているつなぎを着用する場合もあります。頭部は頭巾でカバーするのが一般的です。
セパレートタイプ
「セパレート」タイプのクリーンウェアを着用するのは、おおむねクラス10,000以下の現場です。セパレートのクリーンウェアは構造上、下に着用している衣服が露出しやすいので、取り扱いに気をつけなければなりません。また、セパレートのクリーンウェアは、冬場に発塵量が増える傾向があるため、トップスはボトムスの中に入れて着用すると、これを防ぐことができます。
クリーンウェアの管理方法
クリーンウェアを着用しても、それが適切に管理されていなければまったく意味がありません。人間が行動するとどうしてもゴミやホコリを発生させてしまうため、クリーンウェアは適切に管理・着用しましょう。
まず、クリーンウェアが防ぐべき発塵についてご紹介します。発塵は、主に3つの要因により起こります。
- ① 漏洩
- 漏洩は、適切なデザインやサイズ、素材のウェアを選ばなかったり、不用な化粧をしたりしていた場合に発生しやすい発塵です。
- ② 剥離
- 剥離は、劣化や損傷、クリーンウェアの着脱の際などに発生しやすい発塵です。
- ③ 透過
- 透過は、やはり劣化や損傷などにより発生しやすい発塵です。
クリーンウェアは、「クリーンルーム用衣服管理基準」に基づいて管理・着用しなければなりません。クリーニングも適切な方法で行う必要がありますが、受け渡しも含め、しっかりと管理体制を構築しないと、現場での製造管理にも大きな影響を与えてしまうため、専任のクリーンウェア管理者を置くことが望まれます。
クリーンウェア管理者がやるべき仕事は以下のとおりです。
- クリーンウェアのチェック(新品の入荷後とクリーニング後)
- 着用する者に適合するウェアの支給(サイズなど)
- 着脱方法の指示・管理
- クリーニングの計画や廃棄の決断
- メンテナンス
- 保管
なお、クリーンウェアの保管には神経を使う必要があります。クリーンウェアは、着用する場所が場所なので、保管の際も使用するクリーンルームと同程度の清浄レベルの場所を確保しなければなりません。また、クリーニングに汚れたクリーンウェアを出すことはできないので、汚れているウェアについては、事前に洗っておく必要があります。
クリーンウェアを着用・管理する人が注意すべきこと
クリーンウェアは、着用する場所の清浄レベルに合わせて選ぶと同時に、しっかりとその能力を発揮させる必要があります。それを行うのは着用する人です。クリーンウェアを着用する人が注意すべきことについて確認していきましょう。
清潔に保つ
クリーンウェアは、定期的にクリーニングしなければなりません。また、クリーンウェアは、使用する作業ごとに分けて保管する必要があります。異なる作業で使用するクリーンウェアを共用してしまうと清浄レベルを保てなくなってしまいます。クリーンウェアとほかの作業着などを同時にロッカーに保管することは禁物です。同様に、ブーツも上履きなどといっしょにロッカーに保管してはなりません。汚れたクリーンスーツを着て作業している人がいたら、すぐに着替えさせます。
正しく着る
作業員それぞれが、体格に合ったクリーンウェアを着用しなければなりません。首回りや腰紐はしっかり留め、ゆっくり作業しましょう。
破れやほころびのあるクリーンウェアは着用しない
破れやほころびのあるクリーンウェアを着用してはいけません。ゴムの緩みなどにも気を配り、問題がある場合は修理、もしくは交換してから使うようにしましょう。ピンなどの不要なアクセサリーもつけてはいけません。